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ハルバースタムが死んだ [週刊金曜日連載ギャグコラム「ずぼらのブンカ手帳」]

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 あああああああ悲しい。

 いつもふざけ切った駄文ばかり書きなぐっている小生にも、コレハ居住マヒヲ正サネバと思う時があります。

 自分の職業人生にとって終生倣うべき大切なことを教えてくれた、導師のような人物が物故された。そんなときです。

 小生にとってその「師」とは、アメリカ人ジャーナリストのデビッド・ハルバースタムであります。彼は四月二十三日に自動車事故に巻き込まれ、七十三歳で突然天国へ行ってしまった。

 彼の「ベスト&ブライテスト」という名作をご存知でしょうか。アメリカで最も家柄も頭がよい秀才たちが集まったケネディ政権が、どうしてベトナム戦争という世紀の愚行になだれ込んでいったのか。

 その一部始終を克明に再現したノンフィクションであり、かつて一読した小生は同業者のはしくれとして「どうやったらこんな話が取材できるんだ」と悶絶したものであります。

 そのハルバースタムにインタビューできる!

 そんなすごい仕事を命じられたのは、忘れもしない、九五年四月のことでした。

 当時、小生は三十二歳のガキんちょ雑誌記者。相手は世界的ジャーナリスト。どないすんねんとコーフン状態で前夜、徹夜のリサーチで気が付いた。

 何と、インタビューの当日が彼の誕生日じゃないですか。

 一計を案じた小生、翌日彼の泊まるホテルに行く前に銀座の文具店に寄って、浮世絵バースデイカードを買った。「次の傑作を楽しみにしています」と書き添えて。

 彼の部屋のドアをノックしたら、身長百九十センチのバカでかい白人のおっさんがぬぼーと出てきた。

 ハーバード時代にボート部で鍛えた、モリモリに分厚い胸板をスーツに包んでいる。

 はっきり言って気圧されました。

「まあ、入れや」

 そうは言うんだけど、この人、何とかしてよと言いたいくらい無愛想で無口、にこりともしないだなあ。

 もう、どうにでもなれ!ヤケクソで「ミスター・ハルバースタム、ハッピー・バースデイ!」とカードを渡したら、彼の表情が一変、ニカーと笑った。

「調べてきたな (You knew it) 」

 嗚呼、やはり同じ職業を共にする者同士、彼はぼくが必死で下調べをしてきたことを理解してくれたのです。

 そこからは、六十一歳の先輩記者との、くつろいだ会話になりました。そこで彼は教えてくれたのです。

「ジャーナリストは人気者でなくていい。真実を述べさえすればいい。例えそれが人々の聞きたくないことでもね」と。

「ベトナム介入は間違いであり、アメリカは必ず負ける」。一九六三年という早い段階でそう言った彼は、世間の激しいバッシングを受けたそうです。

「政治家は当選しなくちゃいけないからね。人気者でないといけないんだよ。でもジャーナリストにそんな必要はないね」。

 彼は断言しました。そしていろんなことを教えてくれた。

「真実を教えてくれる友人が十人いたら、百万人に嫌われても俺は平気だね」
「社会の主流の言うことはまず疑え。そして反駁しろ」。

 あのとき、小生の中で後戻りのできない変化が起きました。

「読者のみなさんと共に」とか言って読者や視聴者に媚びへつらうマスコミや、人気取りのために耳当たりの良い事ばかり言ってる自称ジャーナリストなんて、スットコドッコイのトンチキチン、要するにパチもん、ジャーナリズムごっこやんけ。ははははは。

 「おい、真実を書いてるか?嫌われることをためらうなよ」。

 今でも、記事を書くたびに導師の声が聞こえます。

 天上の師よ、小生はちゃんと読者に嫌われていますか?

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